ヒエラルキー
大山「ふっふっはっはっふっふっはっは!」
瀧澤「足りなーい!腿の角度足りないよー!もっと腿上げて!もっとできるんだってば!頑張ればもっといい角度出るんだってば!はいイチニ!サンシ!」
大山「おーす!」
瀧澤「……はいストップ!」
大山「ぶはぁ!(その場に倒れこむ)」
瀧澤「はい二分休憩なー。ふふーん♪最速でぇ金縛りィ〜おしゃまなBOY&GIRL♪」
大山「あの……師匠!」
瀧澤「♪ファッキューファッキュー世界の中心とやらで〜ガムを噛むぅ〜♪」
大山「師匠!!」
瀧澤「…どうした弟子?」
大山「僕……師匠になりたいです!!」
瀧澤「……弟子…(瀧澤、首からかけたストップウォッチを外す)…………ダメ!!」
(ストップウォッチを再びかける)
瀧澤「はいじゃあ次行っちゃおうかー!次はあれだよー!腕立てだよー!さぁ!」
大山「ぬおー!!」
瀧澤「さぁこい!見える!見えるよ!次のステージが見えてるよ!ほらっ…ほらっ、ほら!ストーップ!!」
大山「ぶふぉぅ!(倒れこむ)」
瀧澤「よーし2分休憩なー♪ズズン♪戦争ぅ〜中東は戦争ぅ〜でも虫こーない♪虫こーない♪ラララ平和〜♪」
大山「いや……だから…師匠!」
瀧澤「なんだよさっきから!弟子のくせに師匠のハートフルソング止めてんじゃねぇよ!」
大山「ですから!僕も、師匠のように、師匠になりたいんですっ!!」
瀧澤「……(ストップウォッチを外す)いや、ダメだって言ったじゃん…(再びかける)はいじゃあ次…」
大山「まだ2分経ってないですよ!僕の話を聞いてください師匠!」
瀧澤「だってさーお前、言ってる意味が分かんないんだもん…。なに?師匠になりたいって?お前が?」
大山「はい!」
瀧澤「……なんで?」
大山「だって……師匠になったら、トレーニングしなくてよくなるじゃないですか!!」
瀧澤「……お前はバカなの?バカ弟子なのか?」
大山「バカではありません!」
瀧澤「……いいか。一回しか言わないからよく聞けよ?トレーニングやめたら……弟子じゃなくなっちゃうでしょ!!」
大山「……………………そっか!!」
瀧澤「はい次、スクワット行っちゃうよぉ!!膝がっくんがっくん言わせちゃうよぉ!!はい、始め!!」
大山「くづぅあー!!」
瀧澤「やばい……やばいよお前……輝いてる…キッラキラ。キッラキラタイム始まってるよ!
いまこの瞬間にも倒れていく兵士たちの、そういうのを、一切感じさせないよ!!
そいっ…そいっ…そいっ!ストーーーーーーップ!!!」
大山「ばもへぁぁぁ!!(倒れこむ)」
瀧澤「はい2……1分半休憩!」
大山「師匠!」
瀧澤「うっせバーカ!呼ぶなバーカ!!」
大山「やっぱり納得できません!!僕も師匠になりたいです!!」
瀧澤「だからトレーニング止めたら弟子じゃなくなっちゃうんだよお前!!」
大山「………………一回しか言わないって言ったのに!!」
瀧澤「……弟子よ。お前にすごいことを教えてやろう……」
大山「なんですか……」
瀧澤「いいか。弟子は師匠に、なれないの!!」
大山「…………………そうだったんだー!!」
瀧澤「はい腹筋ターイム!始めぇ!!」
大山「ぺっちゅぉぉぉ!!!」
瀧澤「Freedom?Are You Freedom?いいよぉ!いけすいかないよ!逆にいけすかなさが際立ってるよぉ!!
焼けそう!今お前になんか乗っけたらこんがり焼けそうだよぉぉぉぉぉ!!
スターーーーーーーーーーーーーーーッピ!!!!!!!!!!!!」
大山「ぺっちょん…(ぐったり)」
瀧澤「はい休憩……要らないか」
大山「……いや……要ります……絶対要ります……」
瀧澤「じゃ1分な」
大山「はぁはぁはぁはぁはぁ…………でも…………おかしいですよね……」
瀧澤「あん?何がよ?」
大山「弟子は師匠になれないなら、師匠はどうやって師匠になったんですか…?」
瀧澤「……え…………そんなん決まってんじゃん……師匠は…生まれつき師匠なんだよ」
大山「そうなんですか……」
瀧澤「……大体さぁ、師匠になりたいなりたいっていうけど、それって師匠が楽だと思ってるからでしょ?」
大山「はい」
瀧澤「はっきり肯定したよこいつ。言っとくけど、世間で言われてるほど師匠も楽じゃないよ?」
大山「……そうですか?」
瀧澤「そうだよ、お前。だってやっぱり……まず責任感が弟子とは全然違うしさ。あと、うん……師匠にしかできない仕事も結構あるしさ…」
大山「たとえばどんな……?」
瀧澤「……桜の開花予想とかあんじゃん?あれやってんの師匠だからね」
大山「そうだったんすか?!」
瀧澤「うん。あと信号あるじゃない?」
大山「はい……まさか赤とか青とか信号変えてるのって師匠が……?」
瀧澤「バカ。そんなん無理だよ。そうじゃなくてあの歩行者用のメロディあるでしょ?あれハミングしてんの師匠」
大山「すげー!!」
瀧澤「すごいっしょ?三人がかりだからね、ハミングは」
大山「そんな緻密なハーモニーだったんですね……ていうか」
瀧澤「うん?」
大山「……すごい楽そう」
瀧澤「うるさいよ……あ、すごい時間使っちゃった。ほら次うさぎ跳び」
大山「……………………」
瀧澤「……何してんの?うさぎ跳びだよ?」
大山「従うつもりはありませんよ。ふふふ……ここに来て、師匠の弟子になって早5年……最近気づいたんです。
毎日トレーニングばっかりさせられてるうちに、僕、師匠超えちゃったんじゃないかってね」
瀧澤「な……バカじゃーん!で、弟子が師匠超えられるわけないじゃーん!」
大山「開花予想やハミングばっかやってる人が強いわけないでしょ!!
勝負してください!僕が勝ったら、師匠の座は僕がもらいますよ!さぁ!」
瀧澤「…………………本気か?」
大山「くどい!」
瀧澤「どうやら身体で味わわせねばわからぬようだな。よかろう。ここでは狭い。表に出ろ!!」
大山「おっしゃぁぁぁぁ!!」
大山「いやー楽勝楽勝」
瀧澤「新師匠昇格おめでとうございます」
大山「いや、ありがとう。あいつ途中で劣勢だからって開花予想対決に持ち込もうとしてたからね。全然弱すぎて相手にならなかったよ」
瀧澤「左様でございますか」
大山「しかし…それにしてもあっけないというか…頂点というのも、案外つまらないものなんだね」
瀧澤「……頂点、でございますか?」
大山「ああ。高そうに見えた山も、登ってみればそうでもなかった。拍子抜けというか、なんとなく虚しい気分だよ。
目標がない人生というのも考えものだな…………」
瀧澤「…………」
大山「……でさ、これどこに向かってんの?もう一時間くらいずっとこのエレベーター乗りっぱなしじゃない?」
瀧澤「地上ですよ」
大山「……え?」
瀧澤「着きました」
大山「着いたって……ここどこです?」
瀧澤「ですから、地上です。そして(上を指さす)あちらが今後のあなたの目標です」
大山「(見上げる)……なんですかこれは?」
瀧澤「ごらんの通り、『人間』でございます」
大山「…………えぇぇぇぇぇ?!俺……えぇぇぇぇぇ?!」
瀧澤「どうされました?」
大山「これ人間って……でかっ!!俺ちっさ!!じゃあ俺は何なの?!人間じゃないの?!」
瀧澤「はは、御冗談を。あなたようやく『師匠』になられたところじゃないですか。師匠昇格は、人間への挑戦権を与えられたに過ぎません」
大山「挑戦権って…え、俺こいつと闘うの?!」
瀧澤「格上げしたければ、闘ってください。
ちなみにあなたの師匠も、かつて人間に挑戦し、敗れ、現在のようなハミングを中心とした生活を余儀なくされているのです」
大山「そ、そうなの…?しかし……これでかいなー!!何年物?!」
瀧澤「3年物ですね」
大山「3年でこんなでかくなんの?!」
瀧澤「向こう12、3年は大きくなり続けますね」
大山「化けもんじゃねぇか…」
瀧澤「さぁ。どうされますか?頂点を目指すか、脱落してハミングの練習をするか!」
大山「…………よっしゃぁぁぁぁ!!!!!」
瀧澤「行くんですね!」
大山「ハミングの練習します…………」
瀧澤「……………………」
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